息子の就職をきっかけに栃木県足利市にご縁のできた筆者。さっそく足利から仙台へ、下道だけで帰ってきてみた。高速道路で4時間かかる道のりは、3ケタ国道と気まぐれな休憩で396km、10時間のロングソロツーリングとなった。後編の今回は福島県南会津から仙台までのコース。まずは前編をどうぞ。
腹を満たしてプン太郎でさらに北上する。南会津は数年前に一泊ツーリングを計画したことがあり(今もそれはあきらめていない)、本当はこんな通り過ぎるだけで済ますのは不本意なのだ。しかし仕方ない。などと考えつつR121で南会津町中に進んで嬉しくなってしまった。筆者がよく知っている地方の小都市、しかも活気のある小さな町。ちょうど昼時だったせいもあるだろうか。人もクルマもいきおいがいい。すっかり嬉しくなって中心部を抜け郊外へ踏み出したとたん、今度は大パノラマである。雨は小やみになり、視界の180度が連峰に圧倒される。いくつも重なる山々の山頂付近はたなびく雲で霞む。そんな景色の中、阿賀川のほとりを山間を縫うようにR121は走る。思わず声を出してしまった。この景色は春夏秋冬すべての季節で見てみたくなる。
どんどん山の中へ上がっていき、芦ノ牧温泉を経てようやく会津若松市へ。市内のトラフィックはかなり悪く、のろのろ+青信号を1回で渡れないほど。おかげで左右をキョロキョロできたのはもっけの幸い。会津若松も家族で遊びに来たことがあって、非常に思い出深い街だ。今回はどこにも寄らなかったが、コロナ禍終焉の際はまた遊びに来るつもりだ。
なつかしの鶴ヶ城
自動車専用道路「会津縦貫道」で喜多方市内へ。磐梯山や西の連邦を見渡せる素晴らしい道路だ。片側1車線、ペースの遅い軽自動車なんかがいても眺めがいいので我慢できる……ような気がする。
市内へ入り、米沢へ抜けるにはこの会津縦貫道を降りてひたすらまっすぐ市街地を走り抜ければ良いのだが、どうしても「お菓子の蔵太郎庵」のお菓子を買いたくて喜多方店に寄り道。太郎庵はどの製品を買ってもハズレが無いが、それだけでなく店員の接客があまりにも気持ち良くて、返って当方が襟を正すという気味がある。店内は大混雑なのに、イライラしている客などおらず、みなニコニコだ。おばあちゃんが子供のようにはしゃいであらどら焼きよ、まぁあられもあるわと、次々バスケットに商品を入れている。筆者は豆大福と「くいっちい(会津の方言で「食べたい」の意)」というチーズ饅頭を購入。レジ前にお客の行列ができると、奥で箱詰めなどしていた店員全員が目ざとく見つけ、お客ひとりひとりにゆっくり大きな声で丁寧に対応してくれる。嬉しくて「二品しか買わなくてすみません」という気持ちになってしまう。ともあれ、おみやげ第二弾も無事購入できた。山脈を超えて山形県米沢市を目指す。
太郎庵喜多方店
福島県喜多方市字屋敷免3962-1
峠のトンネルを10本くらい抜けるとようやく米沢側なのだが、とたんに道路左右が雪壁である。各トンネルの出入口には「トンネル内凍結注意」の看板があるが、これはハッタリではなかろう。標高が落ちても状況は変わらず、この日はたまたま暖かかったようで、道路の雨水から田んぼの積雪から、激しい水蒸気が立ち昇り、かなり視界が悪化する区間があった。こんなの初体験である。
雨中のドライブが続き少し疲れてきたので、道の駅たざわに入ってまたもや休憩。すぐ近くの「森のパン屋」というパン屋さんの移動販売バンが停まっている。こんな雨じゃさっぱり売れまい。わずかでも売り上げに協力すべく、いくばくかのパンを購入。おみやげ第三弾である。翌日の朝ごはんにしよう。
米沢市内を華麗にスルー。本当はあそこにもここにも立ち寄りたいのだが、度重なる休憩が祟って時間は押しぎみ。残念。道の駅よねざわの前を通り、K1米沢高畠線に乗る。が、すぐに田んぼの中を突っ切る脇道へ。alfa_manbowさん直伝のブドウマツタケラインへのショートカットである。直前に別エントリーにいただいたkikuchiさんのコメントで、ブドウマツタケラインは冬季閉鎖中と知ってはいたが、米沢・高畠間、つまりラインの南半分くらいは走れるのではないかと踏んでの博打である。
がーん
しょぼん
残念ながら勝負に負けた。米沢・高畠の冬を甘く見てはいけない。すごすごと表の道へコースを替え、R113で宮城県七ヶ宿を目指す。雨は降ったり止んだり。ここまで来ればあとは一気に走り切ってしまおう。おなじみK51とR457で遠刈田温泉へ。村田町へ抜け太白区生出から市内へ抜け、17:20に無事帰宅した。
村田町で見かけた
梅林
2日間の合計で727km。
今回の足利・仙台間は
10時間/396km
今回は無事に長距離を走りきれるかをテーマに据えたので、道中の魅力的な土地土地を素通りしてきた。非常に残念なので、今後機会を見つけて再訪したい。こうやって半日10時間もかければ、北関東から東北の仙台まで、下道だけで帰ってこられるんだなぁ。道中右折すれば須賀川とか那須塩原とか、E4東北自動車道を走っている際のマイルストーン的な地名が現れるのも感慨深かった。「あぁ、那須高原はここを曲がると行けちゃうのかぁ」という感慨だ。もうひとつは満開の桜から雪壁まで、春から冬に時間を巻き戻すような体験ができたことも味わい深い。季節の変化という日本に住む醍醐味を、1日に圧縮して味わってしまった。こういう感慨はやはり一気にたくさん走らないと得られない。七ヶ宿あたりから腰と右膝が痛くなったが、これは同じ姿勢でいすぎたためと思われる。今後は要注意。そして筆者が達成感に浸っていたこの日の夜、足利の息子のNCロードスターにはとんでもない事件が起こっていたのだった……。
ところで足利市駅周辺(JR足利駅ではない)に気の利いたおいしい居酒屋をご存じの方がいたら、こっそり教えていただきたい。
(了)