最近「ドライビングシューズとしてのスニーカー」を新調したので、そのことを書いてみたい。

読者の中には「運転する時はこいつを履く」と、マイドライビングシューズを定めている方も多いと思う。筆者は理想の一足としてプーマのドライビングシューズをプン太郎のトランクに常備しているが、それはオフ会や本当にがっつり走るひとりツーリングの時くらいしか履かない。

日々の歩数が少ない筆者には、プーマは普段使いとしてはタイトすぎるのだ。以下の2足はオフィスでも晩ご飯の食材の買い物でも快適な上に、真剣にクルマを運転する時にも概ね神経に障るところがない。

これは以前から運転に適していることを実体験してはいたのだが、あまりにも定番すぎて長い間買い足さなかった1足。普段自覚している数値よりも、2サイズ大きめのものにインソールを入れてちょうど良い(靴屋さんのお姉さんに聞いたらコンバースあるあるらしい)。高校生の頃は365日こいつを履いていたものだが、様々な靴体験を経た2021年、オールスターのソールは薄い方だと筆者は考える。むしろこのソールの頼りない感じをこれまでは敬遠してきたのだが、ことドライビングシューズとして捉えるなら、この薄いソールはむしろ運転向き。きちんとフィットさせて履いている限りペダルとの一体感をそれなりに得られる。踵の形状は特に丸みがあるわけではないが、この程度なら充分足首から下の重みだけで踵を固定できる。

これもあまりにも定番すぎて所有したことがなかった1足。チャックテイラーとの比較の意味で同時に購入してみた。実際に履いてみるとロングセラーも頷ける履きやすさと頑丈さ。履く時の足の入れやすさと履いた後の適度なフィット感の両立は、地味ながら凄いことだと思う。チャックテイラー比ソールは厚めではあるが、きちんとフィッティングさえしてあれば遊びもなく、ペダルとの一体感は確保できる。
運転時に履く靴として重要なのは「踵が丸いこと」、「靴底がなるべく薄いこと」と長く信じてきたが、それらに加えて「タイトめのフィット感」も非常に重要だと最近自覚した。個人的に足を締めつけられる感覚が嫌いで、指先にマージンがあるものを選ぶようにしてきた結果、フィット性は二の次になっていた。しかしそもそも適正サイズの靴を履くことは、運転にも運動にも重要なことは自明である。そんなあたりまえのことを理解するのにも時間がかかったが、知らずに死ぬよりよほど良い。靴の中で足が不必要に遊ばず、ソールと足裏とがきっちり一体化しているなら、ある程度ソールが厚めでも運転には悪影響はない。極端な例を挙げる。

「適正サイズを履いてソールと足裏が一体」なら、ドクターマーティンのブーツでも安全運転はできる。またドイツ御三家などと呼ばれるベンツ/BMW/アウディのDセグメント以上のセダン類は、そもそもスーツに革靴という格好で運転される前提なので、ペダル類の重みづけ(リターンスプリングの強さなど)がそもそも重めに造られているという話もある。通勤・買い物程度ならプン太郎を運転していても特にストレスはない。
運転時にまったくストレスの無い靴に出会うことは稀だ。だが常日ごろからソール厚、踵形状、フィット感を検証しつつ購入することを心がけていれば、奇跡の出会いはある。

「定番じゃないスニーカー、何かないかなー」とネット上を索敵していて見つけたもの。広島のメーカーからの通信販売を躊躇っていたら、たまたま立ち寄った靴屋で扱っていて大興奮して即購入。踵形状、ソールの厚みが自動車運転に理想的な上に、カンガルー皮という素材由来のフィット感も抜群。三要素全部が満点という奇跡の1足。あまりに快適でもう1足買おうとすら思っている。
ここまではアバルト プントエヴォを運転するという前提で書いてきた。だが自動車に様々なタイプと用途がある以上、最適の基準もひとつではない。革靴でアバルト 595の試運転をするのが愚かなら、コンバースを履いてSクラスのペダル類の感触を云々するのもまた愚かということだ。例えばスズキ ジムニーやジープ ラングラーのペダルタッチや加減速との協調具合を確かめたいなら、長靴やワークブーツを履いて運転してみなければ、本当の姿はわからない。別に試乗じゃなくても、その自動車としっかり向き合いたいなら、そういう設計理念と設えに沿うべきだし、それが設計者・製造者への礼儀だと思う(好き嫌いとは別次元の話だ)。
仙台なんて地方都市での生活では、ほとんどの日常生活にクルマの運転が関わってくるから、本当は靴の選択は重要で難しいことだ。運転の時だけ履く靴を車内に用意するというのもひとつの解だが、ズボラな筆者はそれも数回試して挫折している。女性はむしろそれが常識という方も多いかもしれない。もし7cmのピンヒールやサンダルで運転しても別に影響ないじゃんと思う方がいたら、すぐに再考していただきたい。不自然な足首の角度や固定されていないソールは、危険回避行動の際のペダル操作を阻害する可能性がある。ぜひ踵のある、靴底がなるべく平板で、足にフィットしている靴を履いていただくようお願いする。こういうことって、気にしなければ一生気にせずに自動車を運転することはできる。が、気が付いてしまったら蔑ろにはできない。姿勢を正しくしてそのクルマにあった靴を履いていれば、例えトヨタ パッソからでもその自動車の言いたいことを察知することはできる。もちろんダメな自動車の場合、「あぁ、フィードバック解像度が粗いなぁ、こいつは」とげんなりもしてしまうのだけど。