愛用している「耕野のはちみつ」が底をついた。宮城県伊具郡丸森町まで買いに行かねばならぬ。いや、もちろんこのご時世、オンラインショップはある。が、丸森へのいくつかの極上ツーリングルートとはちみつ購入は、すでに筆者の中ではワンセットなのである。家人を伴ってプン太郎で行くつもりが当日朝に息子も同乗すると言いだした。3人乗ったらもうプン太郎はいつものプン太郎ではなく、常に非力さを意識しつつの道のりになってしまう。増してやこの日は越河(こすごう)側のR4からのワインディングロード、K105を東進するつもりだったので、同乗者は少なければ少ないほど良い。ということでプン太郎をあきらめ、家人のシトロエン C3に足を急きょ変更することにした。運転はもちろん筆者である。体調不良で自宅で大人しくしている日々ではあるが、運転に飢えている。
楽しみにしていた割りには思いっきり朝寝坊してしまい(笑)、9時過ぎの出発となった。前述のとおり丸森への(楽しい)道行きは何パターンかあるが、この日は村田町から蔵王町へ抜け、白石市の手前でR4へ合流。宮城県最南端の越河地区からK105へ左折し、山中のワインディングでR349へ至る。至るのだがR349はほとんど走らず、阿武隈川の対岸、第3セクター鉄道「阿武隈急行」の線路沿いに丸森町内入りを目論む。
これまでにいくつも丸森行きツーリングレポートを挙げてきたとおり、2019年の大雨による水害で丸森町内と細かい県道・それ以下の細い山道は壊滅した。幹線道路たる番号付きの県道から順次復旧されているが、もっと細い古くからの旧道の類いは1年以上が経過しても一向に開通しなかった。特に水害直前に訪問した際に道を間違えて走ることができなかった「あぶくま駅」から丸森町内への県道未満の細いワインディングと思われる阿武隈川沿いの道路は、あぶくま駅そのものの復旧と併せてなかなか開通しなかった(阿武隈急行線自体もズタズタにされたのだ)。あぶくま急行の全線復旧がかなった今、そろそろ走れるのではないか?と踏んでの道行きではあった。この半月くらいの「三寒四温」的春先の天候から、雪の心配はあまり必要なかろう。実際越河から耕野地区を経由してR349へ至るK105は、未だに路肩の一部崩落箇所がいくつかあったが、対向車もいるくらい「生活道路」として健在だった(基本的には狭い道なので、対向車とのすれ違いでいささか苦労した)。
K105と106の交差点に建つ
「宍戸商店」しぶい!
しかしR349からあぶくま大橋を渡り、見事に復活したあぶくま駅のその前を走る細く険しい道へ進入すると、かろうじて走れるとは言え水害被害は未だ生々しい。何箇所もある崩落箇所はかろうじてコーンを置いて保護しているとは言え、激しい水流でざっくり削られた路肩はそのままである。山肌を水が運んだ人間の半身ほどの大きさの石もまだ路肩にゴロゴロしている。自動車が1台走れる程度の道幅しかない上にアップダウンが激しいので、あちこちに泥水がたまっていたり泥が堆積している。走るのに苦労するほどではないが、クルマは著しく汚れる。標高の高い日陰の部分では残雪もあって油断ならない。しかし、しかしだ。このタフなワインディングロードは近年のベスト5に入る。曲率、アップダウン、道幅の狭さゆえのデリケートな旋回と加減速操作が必須という適度な難しさ、何よりも時折眼前に開ける山々の連なりと左車窓に現れる雄大な阿武隈川の流れ。これで泥まみれじゃなきゃ100点満点だ。
阿武隈川の向こう岸には
観音様が
B/Cセグメント車両を駆るワインディング好きのヘンタイ諸姉諸兄に、自信をもってお勧めできるかというと少し微妙である。それは道路の素性とは関係なく、水害でもたらされた傷ゆえである。しっかり補修された暁にはさぞや……なのだが。現状ではジムニーやラングラー、ディフェンダーなど、本気クロカン車両での踏破をお勧めする。もっともC3で無事に走破できたのだから必要以上に神経質になる必要はないが、とにかくクルマは汚れるのでそのつもりで。
さてそんなワインディングを堪能していたおかげで、あぶくま駅から丸森町内まで1時間くらいかかってしまった(笑)。時はもはや昼餉時、有名なラーメン屋「きく屋」でラーメンをキメようではないか。いざ到着してみれば4-5組み待ち。幸い究極に空腹ではなかったので、春の陽射しを浴びつつ入店を待つのも楽し。
きく屋のメニューは恐ろしくソリッドで、2021年2月現在、基本的には「煮干中華 800円」しかない。これに煮玉子のトッピング(+100円。オススメ!)か大盛り(+150円)のバリエーションがあるきり。サイドメニューは細かく刻んだチャーシューと青のりがトッピングされたバターライスたる「まぜごはん(150円)」だけ(お子様ラーメン 400円てのもあるにはある)。昨年夏に初訪問した際メニューに、味の大改造を予定しており、しばらく味が不安定になるかもしれないけどよろしく、みたいなことが書いてあって、さてどうなったのかとこの日再訪してみたのだが、メニューには「9月にリニューアルして2種類の味を出す予定でしたが、一つはもう少し味作りさせてください」と書かれた札で一部が隠されている。めくってみたらヒドゥンメニューとは「中華そば」だった。なんと!基本の中華そばが未完成ってどういうこっちゃ?と思いつつ煮干中華そばとまぜごはんを堪能。本来煮干し系は苦手な筆者でも楽しめた。スープには刻んだタマネギが散らしてあって、このタマネギに意外や舌のリセット効果がある。
本来ラーメンやバターライスなど、そんな油っこい食べ物は潰瘍性大腸炎持ちの筆者にはご法度メニューではある。息子が同道している場合は「これ以上は危険だな」と思ったら後は息子に託せばいいので、気楽にチャレンジできる。いや、チャレンジしない方がいいけど。でももう一生ラーメン食べられないと思うと、その哀しみで病気が悪化するような気がする。食べようと思えば食べられんのよ、というある種の気楽さもこの病気には必要なのだ(と持論を展開してみるが、同病者はくれぐれも気軽に手出しをしないように)。
退店時、ホールを切り盛りする元気な女性店員に「中華そば、まだかかるんですか?」と訊いてみた。なんでも一度は完成したのだが、コロナ禍で食材流通が滞ってしまい、どうにも仕入れにくい材料があるのだという。アレがないからできないじゃ商売にならないので、入手可能な食材で再トライしている最中なのだという。うおー!それは早く完成させていただきたい。決してラーメン好きではない筆者ですら好感をもってしまう味なのだ。ま、現状でも大繁盛ですけど。
きく屋を後にして、地産地消的物産館「八雄館」へ。駐車場がいっぱいで少し離れた第2駐車場へC3を停める。この駐車場から八雄館までの数百メートルだけでも、旧い建築物マニアの家人は大興奮。街灯とか壁のタイル(レンガ)とか、いまやインスタグラムのヘビーユーザーである。そんな家人は八雄館のさらに向こうにある「旧丸森郵便局」の建物を是が非でも画像に残したいという。あぁ行ってらっしゃい見てらっしゃいで見送り、筆者と息子は八雄館であれこれ物色。
戻ってきた家人の買い物も含めて、無事はちみつも購入。他にもあれこれ買い込んで、向かいのジェラート屋「ジェラテリア ラフェスタ」へ。残念ながら病身ゆえジェラートもご法度なのだが、家人と息子からそれぞれひとくちふたくちもらう。うまーい。発注しないのに店内のイスを使ってごめんなさい。
買ったし食べたので丸森町を辞することにする。駐車場までの道中、ふたたび家人は牛歩で画像を撮りまくり。帰路ももちろん筆者が運転する。村田町への(からの)一番ストレートなコース、大河原町と蔵王町経由のコースを選択。
大河原町に踏み込んでR4を横断、少し走ったところで国交省設置の青看板に書かれた「(左折)蔵王町」の文字に誘われ、未踏破の道路を西進。さて蔵王町のどこに出るのか……。とワクワクして走っていたのだが、途中の山道でピンと閃いてしまう。円田中学校の南、なるほど蔵王町、K115のある交差点に出てしまう。いや、ここは朝走った道。あぁあああ、そうだよぉおおお♪。ということで、この後は無茶をせず朝来た道を帰ってくることにした。トリップメーター操作に慣れておらず記録画像を撮り損ねたが、約6時間/約150kmの道のりであった。
ちょっと無茶なコース取りだったが、丸森町への入町ルートはほぼコンプリートしたと言えよう。今回のあぶくま駅からのルート、良い子はマネしないように。エクストリームなヘンタイ諸姉諸兄、とにかくご安全に。次はプン太郎で走ろうじゃあないか。