今回気仙沼に行ってきた理由は簡単だ。「リアス・アーク美術館」で家人が贔屓にしている作家が、「N.E.blood 21(東北・北海道在住若手作家を紹介するシリーズ企画)」に取り上げられていたからだ。本当はまったく別のプランがあったのだか、「そう言えば最終日なんだよね」と家人が思いだした。こういう巡り合わせは最優先すべきである。せっかく気仙沼を目的地にするなら「ゆう寿司バイパス店」にも久しぶりに顔を出したい。訪問目的がふたつもあるなんて重畳至極である。復路をまったく考慮せずにシトロエン C3で出かけた。
体力温存を旨にE45三陸自動車道。鳴瀬奥松島ICまでは相変わらず大和町・大里町・東松島市などの緑豊かな田園地帯を行く。そしていったんE45に乗ってしまえば、今はもう気仙沼市街地まで一直線である。SA/PAとの折衷案的に設置された道の駅三滝堂で飲みものを買った以外は、気仙沼中央ICまでノンストップ。実際に下道に降りてから美術館までの経路は少々わかりにくく、GoogleMapに世話になってしまった。
リアスアーク美術館、実は今回が初訪問である。これまでも訪問する意欲はあったのだが、いろいろと巡り合わせが悪くてかなわなかった。なんと言ってもここは東日本大震災とその津波による被害の記録を、常設展として公開しているのが大きな特徴だ。詳しくは下記のリンクをぜひお読みいただきたい。
内容が内容だけにさらりと観られるものではなく、とても疲れる。残念ながらこちらの体力切れで後半は駆け足になってしまい、もうひとつの常設展示(民俗資料)を観ることはあきらめた。また来る。何度でも観る価値のある展示だった。
話の順序が逆だがN.E.blood 21展も良かった。会場は作品の持つエネルギーに対して会場がコンパクトだったようで、濃縮還元ジュースを一気に飲み干したような爽快感があった。最近つくづく思うのは、「いま注目の若手作家」などとカテゴライズされる有能な作家が、軒並み30歳代だと言うことだ。「おお!イキオイがあるな!」とこっちが嬉しくなってしまう作家は、皆そんな年齢なのだ。自分は歳を取ったなぁとつくづく思う。創作エネルギーと技巧が不安定ながらもバランスする(しはじめる)のが、きっと30歳代ということなのだろう。
大満足と未練を残して美術館を後にする。ゆう寿司バイパス店は道路1本で到着できる。ゆう寿司と筆者の因縁は以前旧ブログで書いた。前回の訪問からなんと4年も経過してしまった。わくわくして店に乗り付けたら、入口には準備中の看板と「ご予約のお客様のみとさせていただきます」の張り紙。無念!しかしご繁盛でなによりだ。気が引けてうっかり挨拶せずに離れてしまった。後悔。で、めげずに「気仙沼ゆう寿司」に向かう。こちらはバイパス店のご親族(確かご兄弟の兄上)のお店。初訪問である。カウンターを所望したが感染症対策で今はテーブル席のみだという。残念だがお店の考えに従う。
かなうなら再訪し、カウンターで食べたい。めでたく満腹になり、ようやくここで復路を考える余裕が出てくる。E45を引き返すのが得策ではあるが、まったくもっておもしろくない。少々ボリューミーだが、県道里山コースを選択。
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筆者は里山の風景を、家人は味わい深い建築物を撮影するのに夢中になってしまい、とにかくぜんぜん前に進まない(笑)。時間をかけて登米市の道の駅林林館(りんりんかん)に到着。しばしの休憩後、大人しくE45に再び乗り、来た道を引き返した。
家人は子どもたちが産まれるまでは完全なペーパードライバーで、そのことがずっと頭の中にあるらしく、今回の道行きでも「わたしが自力でこんな遠くに来られるなんて……!」と感動していた。自動車運転の醍醐味のひとつが「肉体能力を超えた移動距離」だと筆者は信じる。仙台から気仙沼へ好きな作家の展覧会を観にいく。それも日帰りで。なんという歓びだろうか。