気仙沼の大島へ家人と渡ってきた。結論から言うと、仙台在住のヘンタイは、冬は海沿いを走るに限る、やっぱり。ドライ路面を安心して距離を重ねることができる。前回は牡鹿半島だったので、今度は唐桑方面の大島、ごく自然な成り行きである。そして大島と言えば「魚研」さんである。魚研さんについてはこちらのエントリーをお読みいただきたい。アバルト 595で島内を爆走する魚屋さんである。2020年1月に奇跡の邂逅を得たものの、再訪の機会を作れず1年が過ぎてしまった。同じ敷地内の観光施設も稼働し始めているだろうし、様子を伺いに行きたい。もちろん帰路は岩手・宮城県境を縫う県道を走破する心づもり。完璧じゃないか。
ダブルシェブロンで行くのが完璧なのか?とツッコミたくてうずうずしている読者もおられよう。この日の直前、家人が腰を痛めてしまった(ぎっくり腰の予兆みたいなやつ)。クルマの運転も座っていることも問題ないが、乗り降りアクションだけは要注意と本人が言う。そうなるとプン太郎のセミバケットみたいなシートよりも、C3の方が確実に安全ではあろう。そんな理由なのだが、運転をシェアできるので、これも歓迎である。
早めの昼食を大島でと目論み、加えてバイトに出かける息子を送っていく都合から朝7時半前に自宅を出発。富谷市を経由して大郷町へ。そこから先はお決まりのコースで鳴瀬奥松島ICからE45三陸自動車道へ乗り、あとはひたすら北上。ちょうど気仙沼市街地まで1本につながってから初めてのE45走破となった。感慨深い。
ファミリーマート黒川鶴巣店
(宮城県黒川郡大和町鶴巣鳥屋檀ノ輿55-5)
での豪華朝食
気仙沼港をかすめつつ市街地を走り抜け唐桑方面へ向かう。相変わらず工事工事の連続で、風景を見おぼえる前に変わっていってしまう。10時半過ぎには大島に入島。素晴らしいタイミングである。まずは魚研さんへ。
E45矢本PA(下り)
まもなく
気仙沼港IC
旧フェリー乗り場
at 大島
野杜海と書いて
のどか、と読む
残念至極であるが、魚研さんはお休みだった。どうも様子がおかしい。訪れたのは週末、稼ぎ時なのに、隣接する「カフェ春」さんだけでなく、ほぼすべての店舗が休業状態。暗い魚研さんの店内を覗いてみると、昨日今日の休店ではなさそうだ。コロナ禍による中長期の休業なのだろうか。お知らせ的な張り紙もない。隣接する気仙沼大島ウェルカム・ターミナルの観光協会的窓口で訊いても要領を得ない。1月の後半、気仙沼市内でもじわじわとコロナウィルス感染者が増えつつある。魚研さんのご無事と早期の店舗営業再開をお祈りするものなり。
さてそうなると昼食をどうしたものか。ウェルカム・ターミナルでさんまのみりん干しのパックを購入し、あわてず騒がず島内観光。夏の民宿営業がメインの大島の冬に、どういう観光資源があるのかって?家人にとっては見どころ満載だった。家人は工事現場の単管バリケードの足とか(カエルとかキティちゃんとか意外なキャラものがある)、街灯のランプ周辺の意匠とか、古い建物などに大変なご執心である。そういう目で見ると大島島内もワンダーランド、らしい。昭和の匂いを色濃く漂わせる民宿や民家が無数にある。龍舞崎の美麗景色も良かったが、家人としてはあらゆる意味で「枯れた」ものどものが愛おしくてならない様子。ひっきりなしにiPhoneのシャッター音が鳴り響く。
味わい深い
ある民宿
そんな風に大島の南西部分を堪能し、頃は11時半。信頼と実績の「はま家」で昼食を摂ることにする。島の南東側を爆走している間も、昼時なのに準備中の看板を出しっぱなしの食堂を見かける。あぁ、はま家、やっててくれ……。という筆者の願いが届き、はま家は無事営業中だった。まぐろ丼と三食丼(まぐろ、サーモン、塩うに)、どちらも1,650円を注文。
丼を堪能し、後半戦=帰路に。この帰路は宮城県北県道三昧コースの、特上コースである。大島に別れを告げ、まずはR284沿いの前木簡易郵便局を目印に県道へ折れ、山里を縫って走りつつ保呂羽湖へ。一部積雪 or 凍結路面があるものの、生活道路らしくしっかり除雪されており、山際なのにドライ路面がほとんど。ありがたいことこの上ない。
気仙沼市街地の
味わい深い建物その1
気仙沼市街地の
味わい深い建物その2
誰もいない保呂羽湖の静けさと神秘さを堪能し、次の中継点は宮城県に戻り旧東和町(現登米市)の「道の駅林林館」。保呂羽湖を出発したあたりから空には雲が多くなってきて、日暮れ時のようなうす暗さに。特に宮城と岩手の県境を走るR398に、このサミシイ空模様がふさわしい。
林林館に隣接する「森の茶屋」でお土産を買うべく、かなり本気で物色するもどうしても食指が動くものがない。申し訳ないが何も買わずに出発。満々と水をたたえる北上川沿いを南下し、登米の中心地・旧登米(とよま)町内でR15に乗り、旧米山町(現大崎市)を目指す。この登米町-米山町間のR15も味わい深い。広大な田園地帯の中を走り抜けるうちに、小さな集落が何度も現れる。場所によっては宮城・岩手・秋田3県にまたがる栗駒山がくっきり見えるのだが、この日は完全に雲の中。なーに、また来れば良い。
この復路のハイライトは米山町内の平筒沼付近からR346への合流交差点までの区間で、ひたっっっすらまっすぐな農道を爆走できる。このひたすらまっすぐな農道も、宮城県北でしか味わえない。どちらかというと大排気量アメリカンマッスルカー向けの道路だが、C3やプン太郎で走っても充分楽しい。
R15から旧小牛田(こごた・現大崎市)に抜け、K152へ。先日息子と伊豆沼に行った折に走ったばかりだが、逆方向だから良しとする。旧三本木町(現大崎市)を抜け朝走ったコースに戻ってくる。あとは淡々とR457などを仙台市内に戻るだけだ。それほど寄り道も休憩もしていないのに、帰宅は17時過ぎだった。気仙沼から約4時間。無理からぬ所要時間と言える。C3は相変わらずラクチンで、疲労は最低限だ。家人と運転を分け合ったせいもあるだろう。こういう日帰りツーリングで訪れる町や集落で、家人に感化されて意匠を凝らした古い建造物や景色に見とれる楽しみを覚えてしまった今、日帰りでは物足りなくなってきつつある。春に息子が就職して家を出たら、週末一泊ツーリングが増えるかもしれない。それも楽しみだ。