まんまるやはこれまでも何度かこの「クルマで行きます」に登場したが、場所の説明が難しい。宮城県石越町を経由して岩手県花泉町に入ったらK183を東進して10分くらいであろうか。田舎道らしく目印らしいものがない。GoogleMapやApple純正のMap.appに至っては位置情報が間違って登録されている始末である(Appleには報告したので修正されるだろう)。昼時にK183を一関市街地へ進み「なんだかずいぶんたくさんクルマが停まってるな。寄り合いでもあるのか?」と訝しんでしまう家が見えてきたら、鮮やかなオレンジの暖簾も眩しい、そこがまんまるやである。
さて花泉町、石越町への経路は登米市伊豆沼を経由する決定版コースをすでに報告済である(道路が狭い部分があるのでB/Cセグメント車両推奨)。しかし決定版ゆえに新鮮味が薄れてきている。そこでこの日は三本木町・ひまわりの丘を経由して大崎市内を走破、K59を北上し清水町でR4を一瞬北上する。すぐに分岐するK1に乗り、JR東北本線・瀬峰駅へ。そこからさらにクルマを進めて(株)登米精巧からホテルベルイン、JR梅ヶ崎駅、登米市立新田小学校/中学校の前を走り伊豆沼へ至る(紛らわしいことに、この道中にも「まんまる・や」というカフェが存在する)。「のんびり行」を徹底し、写真を撮るためにあちこちで小休憩。
そんなフォトジェニックな小休憩を取ってばかりいたので、伊豆沼に到着する頃には11:30頃になっていた。まずい。満席警報である。止むなく伊豆沼農産直売所/レストラン「くんぺる」をスルー。我が家では年に1回あるかないかの希少事例である。順調に石越町内をスルーしていよいよ花泉町エリアへ。花泉町へ入ってからのK183周辺の眺めがまた美しい。天気予報は良い方にはずれ、陽射しは厳しく気温はぐんぐん上昇。C3の外気温計は30℃を表示。こりゃもはや夏である。そんな夏の田舎の景色に見惚れつつC3を進め、無事まんまるやへ到着。幸い待たずに着席できたが、筆者と家人で満席となった。
「まんまるや」はカフェという看板を出しているが、ランチもたいへんおいしい。筆者は「黒豚肉の七味マヨネーズソースがけ」、家人は「とうもろこしの出汁真丈(しんじょ、つまり糝薯)」。これにご飯+味噌汁+食後の飲みもの+甘味を付ける「全部セット」でオーダー。この甘味は単独デザートメニューから選択でき、筆者は「葛切り黒蜜」、家人は「カシス水ようかん」とした。
これでおひとり1,650円である。価格の高低は主観によるが、まんまるやのランチを2口3口食べれば、適正価格であることを痛感されるに違いない。盆の上のどの料理も過剰な味付けはなく、かと言って味が薄いという不満もない。絶妙な味加減、火加減、水加減の素朴だが手のかかった品ばかり。小皿の付け合わせに至るまで、どの料理も最初の一口を味わうたびに目を丸くしてしまう。糝薯も一切れもらって食べたが歯ごたえといいボリュームといい唸るしかない。そしていつの間にか満腹になってしまうのだ。店主は若い男性だが毎度恐れ入ってしまう。リノベーションによって現出した店内空間も落ち着いた雰囲気。窓の外にはぎらぎらと夏の陽射しに照りつけられる濃い緑。これで店内BGMにひと工夫してくれたら言うことなし!である。
大満足して帰路につく。筆者の運転で石越町へ戻り、迫川のほとりをひたすら西進する。今年3月に吹雪に遭った時とまったく同じコースでR4へ。横断するとそこはK181。さらに西進すれば細倉へ続く。のだが、栗駒岩ヶ崎でK17、南へ曲がる。その交差点の赤信号待ちで筆者ははたと思いだす。パン屋さん「侭-mama-」はこの交差点近接だったはず!と。侭は当ブログで人気急上昇、岩ヶ崎の「スープ屋コトコト」さんで提供されているあのおいしいパンの製造・卸し元である。交差点付近を行ったり来たり、ついにはC3を停め徒歩でも探してみたがどうしても発見できず。ご存知の方がいたら教えていただきたい。失意のうちに(大げさ)K17を岩出山町方面へ向かう。この途中にある「風の沢ミュージアム」というギャラリーも以前から気になっていた。「あとは帰るだけだし」という帰路の精神的余裕も加勢して、突発的に寄ってみることにした。K17から農道に折れて1分で到着するのだが、営業日は週末のみで、平日のこの日は休館日だった。写真だけ撮って撤退。しょぼん。
そんなしょぼん案件を2連発で喰らってしまったが、さらに南下して旧姫松小学校前にある「姫松簡易郵便局」に注目。先日の南相馬・栃窪簡易郵便局に引けを取らないレトロ建築である。
この付近は「にしやらーめん」、「ひめまつの里さのや」「カラオケの王様ミュージックスタジアム」など廃店舗が近接しており、閉校してしまった姫松小学校と合わせて独特の寂寥感のある一角である。K17のこのエリアは先日も走ったばかりだが、往路で走るとついスルーしてしまう。往路独特の高揚感と土地の寂寥感がミスマッチなのだろう。運転手の精神状態とは面白いものだ(先日の細倉鉱山跡地をしみじみ味わったのも、そういえば帰り道だった)。もっともこの姫松小学校付近、「農村婦人の家(これは現役の公設施設)」なんてのものあって、実は活気があるのかもしれない。ほんの5-10分停車していただけなのに、姫松地域が気になって仕方がない。これは良い出会いであろう。
K17をさらに進めば岩出山町に至り、そうするともう本当に新鮮味がない。やむを得ず途中でK59へ乗り、ビューティフル里山景色を経て午前中に走った大崎市内に戻ってくる。何かもうひとつ駄目押しに楽しいこと……と考え、E4東北自動車道・長者原SA(下り)にウォークインから立ち寄る。甘味を購入。コンビニ的商店のないこの地域では、長者原SAは何かと便利である。
長者原からは往路を完全になぞる形で帰ってきた。筆者としては珍しいことだが、往路は家人が運転していた。ひとつのツーリングで同じコースを走らない掟にはぎりぎり抵触しないと考えて良かろう。帰宅したら16時過ぎ。さくっとカフェで昼メシ……のつもりが、けっこうなボリュームのツーリングになってしまった。たまたまコロナ禍による県境越境制限のために、県内限定で楽しそうな行き先をリサーチするようになってしまったが、解像度を上げれば、走り慣れた道にもまだまだわくわくする要素はあることを痛感した。福島、秋田、山形、岩手の道も当然走りたいのだが、宮城県内もまだまだ行かねばならない場所がある。宿題は増える一方なのだった。
※「侭-mama-」様の店舗名を誤記していたのを訂正しました。hoshinashi様、ご指摘ありがとうございました(20210620)