プン太郎のフロント足周り改修が完了し、結果を検証する必要がある。そのためには走り慣れて路面の荒れ具合も身体に染み込んでいるような道がいい。そこで仙台市から七ケ宿町へ。そして山形県高畠町、ブドウマツタケラインに至る農免農道を駆け抜け、時沢のシフォンケーキ専門店「にんまる」でおいしいシフォンケーキを買う。完璧ではないか。ただしその先はノープラン。
まずは仙台市内。太白区生出から坪沼を経て村田町へ向かう。特に坪沼から村田町へのK31は舗装が酷い部分が多い。つい2週間前まではボディに直接伝わるかのような、角の立った鋭い入力に心で泣きながらプン太郎を走らせたものだが、改修後は荒れ具合を冷静に観察できるほど、処理能力が復活した。硬過ぎず柔らか過ぎず。入力の強さや周波数が変わったためか、室内のビビり音が無くなったり、ハンドルコラムの剛性不足が浮上したりと変化は多彩だが、とにかくおそらく走行2万5千kmで購入した当時と同じか、さらに良い状態になった。同乗していた家人も家から100mも走ったところで「うん!変わった!」と言っていたので、誰でもわかるレベルの好転具合である。こうなると笑いがとまらない。
この日は9月の連休でもあったため、主要な道路は驚くほど混んでいた。遠刈田温泉からR457-K51と経由するつもりだったが変更し、村田町内からコスモスラインに乗る。南の終端で白石市・鎌先温泉を経由し、西進してK51に合流すると、七ケ宿町はすぐだ。
R113で高畠町へ。二井宿から一瞬だけK268を北上し、先日も走った農免農道へ折れると、こちらもまたパラダイスである。舗装はけっこう平滑だが、砂が路面に流れ込んでいる部分がいくつもあるのでオーバースピードは禁物。全体的にペースは抑え気味。車内は平和だ。15分も走っていると時沢集落へ到着。にんまるで3種6個のシフォンケーキを無事購入。いえーい。旧時沢小学校前にプン太郎を停め、シフォンケーキをぱくつきながら、次の一手の検討会議を家人と実施。赤湯温泉街の飲食店を新規開拓することにした。
にんまる(山形県東置賜郡高畠町時沢527)
実は高畠町、そして南陽市(赤湯温泉街も南陽市内)で食事をしたことがほとんどない。どうしてもおいしいお店を見つけられなかった(何しろ近在のalfa_manbowさんに教えを請うても思わしい結果は得られなかったほどだ)。ただ以前置賜広域農道と南陽市を組み合わせたひとりツーリングを連続で実施した際に、「赤湯温泉通り」なる美麗かつ走りやすい道路を偶然走り、惹かれていた。ブドウマツタケラインを爆走し、まずは温泉通りをゆるーく流して車内からお店探索。最近になって整備されたであろう赤湯温泉通りは、モダンで明るい。東北の温泉街と聞いて想像する絵とはちょっと違う。そういうギャップを頭の中で埋められず、どんなお店に行きたいのかよくわからなくなってしまった。そこで通りの西端でUターン。ちょうど東西の真ん中付近にあるコインパーキングにプン太郎を停める。徒歩探検である。
良く晴れた昼下がりに知らない街を歩くのは無条件で楽しい。停めた駐車場の付近を少し見回すと、路地に呑み屋の看板が並んでいるのが見える。しかしランチ営業しているお店はほとんどないようだ。温泉通りの大きな交差点でぐるっと周囲を見渡すと、ちょうど目の前にいかにも観光案内所然とした建物が。『赤湯温泉観光センター・ゆーなびからころ館』という大きな看板。こうなりゃ地元民に訊くのが最善だ。しかも南陽市観光協会。プロである。事務所にいたふたりの店員さん(っていうの?観光協会の人)にお勧めのお店を訊く。
「ボリュームはそんなになくて良いんです。そばとか……。あ、でも肉のおいしい店だと嬉しいかも」という矛盾に満ちた質問をしたのだが、親切なふたりの職員さんが知識と経験をフル動員して、いくつかのお店を教えてくれた。温泉街の地図に印もつけてもらった。颯爽と街歩き続行である。お腹減った。
案の定、風情のある温泉街は赤湯温泉通りと並走する旧い通りの方だった。立派な、歴史ありそうな旅館が軒を並べ、周辺には呑み屋が点在し、地元の人々に支えられているであろう日用品のお店が並ぶ。連休が祟ったのか、開いているお店はあまりない。教えてもらったお店の昼メニューを冷やかしつつR13方面(東方面)へ歩を進める。どうも決め手に欠ける感があり、いくつかのお店を断念。
ぶらぶら歩いていたら、旧R13へ出てしまった。この先は念のために訊いたとんかつが食べられるお店しかリストに残っていない。その店は「ふみよし(山形県南陽市赤湯3104)」。看板に「和食 ラーメン」の文字が踊る、紛う事無き町の食堂である。てっきりとんかつ専門店かと思っていたのだが……。「とんかつは専門店で食べる主義」とか「そもそもオレは潰瘍性大腸炎患者じゃないか」などの葛藤があり、お店の入口を睨みつつしばし逡巡。だがこう考えてはどうだろう。プン太郎の足周り検分ツーリングとは言え、これも立派な旅の空である。郷に入っては郷に従え。なによりもからころ館でおふたりに教えてもらった義理がある。普段の自分の流儀は二の次三の次とすべきではないか。それにこのふみよしの佇まい、どうも無視できない魅力がある。久しぶりにとんかつ食べたいし。いざとなったら家人に少し手伝ってもらう、あるいはそもそも別メニューも検討する、と家人を説得し入店。
ふみよしは入店してみれば感じの良いお店だった。近所の人から愛されている雰囲気がある。こういうお店はハズレない。初志貫徹、とんかつ定食を、家人はつけめん(ミソ味)を発注。席につく直前、ナナメ前の席の土建業らしいおにいさんふたりのテーブルに運ばれてきたとんかつ定食をチラ見。とんかつエクスプローラたる筆者は、看板のフォントや衣の色や切り分け方を一瞥するだけでそのトンカツ定食がおいしいか評価できるのだが、幸いふみよしのとんかつは当たりのようだ。ただ完食できるか不安に思うようなボリュームに怯む。
とんかつ定食 1,480円
結果的に「街の愛され食堂のとんかつ定食」としてはとても正しい一皿だった。ご飯は少なめによそってもらい、とんかつ二切れ半を家人に手伝ってもらって辛くも完食。付け合わせのキャベツもポテトサラダも、それだけで一回の食事になりそうな量だった。変にブランド豚肉など使っていないところもいい。ごちそうさまでした。
再び味わい深い温泉街を歩いて戻る。からころ館でおみやげを買いつつ案内のお礼を言う。赤湯、良いところだった。再訪を誓う。ここからは帰路だ。走行経路候補はいくつもあったが、仙台市大倉の門前喫茶Norahに立ち寄りたかったので、山形市内を経由して、上東山-山寺-天童を経由してR48で仙台に戻ることにした。山寺から天童までの、山肌の等高線のとおりに走ることができる農道を久しぶりに走る。西日がまぶしいぜ。ここは生活道路でもあるのでたいていペースの遅い車に頭を押えられる。この日もそうだった。R48も含めたいていそうなってしまう。プン太郎の調子がいいからあまり苦にならないけど。
定点・山形市上東山にあるお社前
門前喫茶Norahは店内飲食をしばらく休止しているので、その分テイクアウトメニューが充実している。はずだったのだが、さすがに閉店30分前の来訪では目ぼしいものはほとんど残っておらず。残部掃討的な買い物。立ち話もそこそこに退店。30分ほどで帰宅。
門前喫茶Norah(宮城県仙台市青葉区大倉堤沢23-3)
日焼けを心配するほどの晴天のもと、改修後のプン太郎の足さばきを堪能するツーリングとなった。帰宅後は赤湯温泉の宿を片っ端からネット検索。湯治は無理でも連泊はしたいものだ。こうして足さばきチェックツーリング第一段は無事終了。
7時間半/242km