まだ味わっていない宮城県内の良道を探求する旅が続く。今回は岩手県境数百メートル手前まで行くものの越境はしない、県境ギリギリツーリングを敢行した。宮城県北、栗駒山麓の町・岩ヶ崎へ出かけた。この町でなにか美味いものを食べて県境に沿って栗駒高原のあたりをするっと流してくる。そう思い立ったは良いが、これというお店も走って楽しい復路も前日まで見つけられず。これはもうデタトコ勝負と決め込んで彼の地に向かったのだが……。
往路はこうだ。普段は避けてしまうので最近すっかりご無沙汰しているR457をがんばって岩出山町まで北上する。さらにK17に乗り換えてひたすら北上して岩ヶ崎。K17も気が付けばもうずいぶん走っていないものなぁ。という回顧主義的なプランを立てていたのだが、まず自宅を出て10分のR457が酷い混雑。いきなり出鼻をくじかれる。世間はまだGWであることを痛感。しかしこれではまったく盛り上がらない!本当は復路の保険と考えていた大衡村の田園地帯に右折して三本木町を目指す。県道農道スキルを遺憾なく発揮。
しかし第2の誤算があった。宮城県はGW近辺は田植えのハイシーズン。まだまだ田植え作業のトラクターや苗床満載の軽トラックが農道に溢れている。わかっている。こちらは完全に邪魔者なのだ。遠慮しつつそそくさと走り抜ける。何かこう、思い通りにならない感が募る。
この日は素晴らしい晴天で旧古川市街地へ向かうK158は田んぼの中の一本道。ここにきてようやく前後の車影もまばらになり、やれ嬉しやとAペダルを踏む右足にも自然と力が……。とその刹那、ルームミラーをちらと見やれば青い上下の服を着たおじさんが、白いバイクにまたがり赤いランプを灯しながら付いてきているではないか!ディンジャーーー!!わざとらしくBペダルを踏んで減速アピール。しばしランデブーの後くるりと引き返してくれた。ふー、とんだ出費になるところだったぜ。この一件で正気に戻り、以後は法規的に正しい速度を心がけて走ったのだった。
コースの詳細を決めずにK59へ乗り換えさらに北上する。が、このまままっすぐ北上していては目指す岩ヶ崎よりもずっと東に出てしまう。少しずつ西にコースをずらしていき岩出山町真山で無事K17に乗り換える。K17は県北を制覇すべくアルファロメオ MiToで走り回っていた頃は何度も何度も走っていたものだ。懐かしいがまったく景色が変わらないな(笑)!そんなこんなでちょうど昼時に岩ヶ崎に到着した。
これまで岩ヶ崎町中を走り抜ける時は、ほぼ確実にR457を南北に通り抜けていた。しかし味わい深い繁華街はどうもR457の東側(の狭い範囲)に固まっていたようで、今回初めて町内をゆっくり走ってみて素敵物件がたくさんあることに気が付いた。ほほう。「山の駅くりこま」なる商業施設の駐車場にプン太郎を停め、Google Mapであたりを付けていたお店に向かって歩き出す。周囲は人影まばらでやっているお店そのものが少ない印象だ。と考えるのも束の間、すぐにお店に着いてしまった。「スープ屋コトコト」に入店する。
スープ屋コトコト(栗原市栗駒岩ケ崎上小路)
お店の流儀がわからず注文こそギクシャクしてしまったが、頼んだ「本日のスープ・人参とコーンのポタージュ 500円」はとても優しいお味だった。問わず語りに素材の良さをアピールしてきてしみじみとうまい。たまたま朝食が遅かったので量もこれくらいがちょうど良い。実はパンとのセットにしたかったのだが、卸してくれているお店の都合で今日はパンがないとのことだった。腹具合としてはむしろ良かったのかもしれない。別注の「紅茶 300円」をいただきつつ復路を大ざっぱに組み立てる。よっしゃ。支払いの時、かわいらしい女主人から「パンがなくてすみません」と声をかけられる。訊けばハード系だそうで、そりゃ今日のスープにマッチしてとても美味しかったことだろう。パン屋さんのご家族にご不幸があって納品ままならず……だそうで、そりゃしょーがない。再訪を誓いつつ退店。その後コトコトさんの向かいにある製造直販のジーンズ屋さんで大興奮したり、山の駅くりこまで地場産の野菜をひやかしたりしつつ岩ヶ崎を発つことにした。
岩ヶ崎から最初に目指すのは岩手県境との距離が1kmもない、R457の定点観測地点である。Google Mapで調べると、それこそ県境から数百メートルのところでR457に合流する農道があるのでそちらから回り込む。こうなると意地でも県外に出るもんかという気になってくる昨今、仕方ないがつまらない。ところがこの岩ヶ崎町内K4からR457を結ぶ短距離の初踏破区間の農道が、ウルトラビューティフルで大感激であった。
R457の定点観測地点でも写真は撮れたが、思ったように栗駒山がきれいに写らず(なので非掲載)。もしかすると木々の葉が落ちて視界が広くなる晩秋から冬が、この場所から栗駒山を見た時一番きれいな季節なのかもしれない。うむ。これはこれで良し。そのままR457からK42に乗って栗駒山方面を目指す。K42と言えば岩手県花巻往復の定番コースだが、当然今日は岩手県方面には曲がらず、そのまま直進して栗駒高原の様子伺いをするつもりで進む。するとどうだ、土砂崩れによる全面通行止め、立哨の警備員のおじさんは通れないという。「せめて途中で左折する、細倉まで抜ける道があるじゃないですか、あそこまでは行けませんか?」と問うと、すぐ手前から左折する代替コースを教えてくれた。この代替コースが、おそらくこの日一番の大充実田園コース。田んぼの中の一本道をひたすら南下。右折していったんは栗駒山方面に標高を上げて行くのだが、峠の途中から今度は花山湖の方へ下っていく。もちろん初踏破。あぁ県境にまだこんな素敵な道路があったなんて。ただ走っているだけで陶然とする経験は1年に1度あるかないか。大当たりの大勝利である。
花山湖へ抜けてR398を西進すればいつもの岩出山町の北でR457に合流するのだが、それではツマラナイ。以前から気になっていた道標「鳴子上原→」に従って、三度初踏破コースにプン太郎を進める。なぜ鳴子上原地区が気になっていたかというと、筆者宅でよく飲んでいる牛乳が鳴子上原産なのだ。どういう土地で牛が過ごしているのか、消費者としては気になるわけで。いざ足を踏み入れてみれば、高原の酪農エリア。景色がいちいち美しい。
予想外に大充実したツーリングになった。ここからの復路はあまり複雑なことは考えず、大人しく既知の道路を安全に走ることにする。鳴子上原から川渡温泉へ抜け、お馴染の山道K267、K226を通って大衡村まで帰ってくる。盛りだくさんすぎて少し疲れた。
約6時間/212km
というわけでスープ屋さんしかり、ジーンズ屋さんしかり、大充実の栗駒・鳴子の農道しかり、別日の松島町のハンバーガー屋さんしかり、ほんの二日で再訪確定のお店がじゃかじゃか増えてしまった。こんな充実したツーリングコースや目的地が、県内にはきっとまだまだあるのだ。フィールドワーク(良道開発)、大事です。しかし視点を変えた脳内シミュレーションのくり返しも同じくらい大事なのだ。「宮城県内限定」という条件があったからこそ計画し走ることができた道。次の課題は県南であろう。ともあれプン太郎、おつかれさま。
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