宮城県の北部、涌谷町にプン太郎を駆って行ってきた。ようやくやってきた休日に、家でボーッとしているのがイヤだから出かけたようなもので、はっきり言うと、あまり遠くなくて北の平野方面ならどこでも良かった。これから迎える冬、東北地方は来年の3月末まで、山沿いに走りに行くのはリスクが高まる。平野部と海岸沿いに新たな魅力ある場所やコースを開発しておく必要がある。レトロ建築物好きの家人とどこに行くか頭を捻った結果、涌谷にお城を見にいこう!となった。帰路は新たな平野部コースの開発に充てる。特にモチベーションが高かったわけではなかった今回の涌谷行、しかしおいしいお店と極上里山県道を発見することになった。
涌谷はこれまで北方面ツーリングに出かけた時にかすめるか、経由するだけの土地だった。R346とR108が交差するので交通量が多い場所……程度にしか認識していなかった。涌谷にはお城があるとか、おいしいお店があるとか、断片的な情報を人づてに聞いてはいたものの、ご縁がなかった。昭和テイストの街並みと城趾が見られれば御の字、ふつうの気取らない昼ごはんが食べられればもうけものと、変に気負わずに出かけたのが奏功したようで、途中で写真も撮ったし、そもそもペースを上げずにのんびり走った。
大和町の定点観測地点、農道をてくてく歩くおじさんがひとり
もうすぐ鹿島台
鹿島台からはR346を馬鹿正直に北上。このパートだって走るのは何年ぶりだろうか。相変わらずペースの遅いクルマが多い。ツーリング経路としては、避けてきてやはり正解だったと再確認。しかし美里町から涌谷町の境目は広大な田園地帯。西の連峰を見やれば、正に来し方行く末が一望できる。すごいパノラマだ。
おなじみ栗駒山
船形連峰
涌谷町内の様子を体感するために、まずはJR涌谷駅へ。駅前広場のすぐ脇ではパチンコ屋とガソリンスタンドが解体作業中。これが駅前?と思わず口をついて出てきそうなほどのシャッター街である。もちろん家人は大興奮。あっという間に姿が見えなくなった。
そろそろ昼時なのだがあまり腹も減っていない。街区を走り飲食店を探しつつ、涌谷城跡・城山公園に向かう。
かつては涌谷伊達家の居城だった涌谷城は、再建され資料館になっていた。涌谷は桜を観光資源のひとつとしているようで、この城山公園にも桜並木がある。春は賑わうのだろうが、この日は深閑として誰もいない。資料館(入館料300円@1名)にも入る気がせず、散歩しただけで退散。
歩いていたらお腹が減ってきた。家人が食べログなどを調べた結果、「つきみち」というお店を候補に挙げる。それでも城山公園から反時計回りに町内を走り、飲食店リサーチに努めたがピンとくるお店がない。ここまで未知の街だと探しようもないということか。あまり冒険せず「手作りハンバーグの店 つきみち」へ。
つきみち(遠田郡涌谷町下道13-1)
そもそも人気店らしいところに、COVID-19対策で座席数を減らしているつきみちは大繁盛。15分くらい待ってようやく着席できた。店内は活気があって、店員の対応も丁寧だ。店主口上がA3の紙にびっしり書かれていたりして(しかもそれが各テーブルにあるようだ)、義理人情に厚い土地柄のようなものが見えてくる。家人はチーズハンバーグ単品とおみそしる、筆者はチーズハンバーグと200gサーロインステーキのセットにライス(小)。筆者にとってのハンバーグ決定版はすでに仙台市内に複数見つけており、涌谷の食堂のハンバーグ、正直なところ大して期待せずにナイフとフォークを入れたのだが……。
サーロインステーキの最初の一切れを噛んでみて驚き。良い肉のうえに火の加減も申し分ない。実にジューシーなおいしいステーキだ。ということは……と食べてみたハンバーグも実においしい。何よりも化学調味料的な味は皆無で、良い肉を最低限のスパイスで、丁寧に火を通しているのがわかる。唯一チンチンに熱くした鉄板の上に料理が盛りつけられるのが残念だが(適切に調理した肉は、温めた普通の陶器の皿に盛ってほしい)、それも些事と許せてしまう味。筆者と家人、自然と黙食になってしまう。大満足して退店。つきみち、再訪決定であるが、入店時間が難しいね!
帰路は大崎市中央方面に向かって走ることだけは漠然と決めていた。もちろんなるべく初踏破の道路を織り交ぜたい。宮城県の内陸路など、「どこを走っても(知っている)どこかへ出る」に決まっているのだが、それは知らない道でも適当に、勘で走っても実害はないということでもある。この心理的プレッシャー皆無の状態での「この道ってどこに出るんだろう」というわくわくは、ツーリング経験値が上がれば上がるほど失われる。今回涌谷町からの帰路に選んだK173も、だから何か期待して選んだわけではなかった。しかし、この涌谷町から大崎市内へ向かうK173が、田園地帯エクスプレス、すこぶる美しい3ケタ県道だったのだ。
これ、きっと天気や走った時間帯も良かったのだろう。傾きかけた陽の光を受けつつ、晩秋-初冬の枯れた田畑の中をひたすらマイペースで走る。これぞ東北ツーリングの醍醐味である。
大崎市街地に出てしまうと、もうこれ以上はトッピングしようもない。K158などを経由してR457へ。前夜怒濤の10時間睡眠を敢行したからだろう、西日の中をひたすら走り続けても眠気は一切ない(家人は助手席で熟睡)。
三本木町、ひまわりの丘……の初冬の風景
約5時間/132km
涌谷町とK173、実に楽しかった。涌谷の街中の魅力的な建物の数々は、家人のインスタグラムアカウントでお確かめいただきたい。