宇都宮で開催されたProfumo姐さんの新愛車お披露目会に参列した後、南会津町の和泉屋旅館に一泊した筆者。COVID-19の影響でご無沙汰していた福島路を様々に味わう復路についた。旅情溢れる和泉屋旅館に辿り着いた前日の様子はこちら。
予想通りにおいしい朝食を平らげる。ご飯をお代わりしたかなんてもう訊かないでほしい。酢みそがかかったナスの田楽やばっけみそ(ふきのとうの味噌漬け)が乗った冷ややっこなど、どれも素朴だが素材のしっかりした味を堪能できるメニューばかり。和泉屋旅館が素晴らしいのは、建物が古いから、あるいはご飯がおいしいからだけではない。宿の従業員がみな気持ち良い人たちばかりなのだ。次から次へと町のおすすめを教えてくれるし、今度来る時は秋がいい、なぜなら寒暖差の激しい南会津の紅葉はそりゃきれいだから等々、南会津という土地への愛がほとばしる。単に外食する時だってお店の人との会話を楽しみにする筆者のような者には、こういうもてなしが一番嬉しい。そして宿泊代は1万円しなかった。おすすめに従って、ぜひ秋にもう一度来たいものだ。
女将さんたちに見送られて宿を発つと、この日は前日とはうって変わって晴天。7時からの朝食を食べ終わってすぐに出発したので、まだ8時にもなっていない。登校する中学生や高校生がそこかしこにいる。隣町の下郷町へと至るR121沿いの景色は雄大で、対面するのは3月に続いて2度目だが、やはり感動してしまう。山の向こうにさらに山が重なり、そのさらに向こうにも山が霞んでいる。R121に沿って流れる阿賀川とのコントラストがとてもダイナミック。平日の朝だから交通量が多く、写真が撮れなくて残念だが、筆者の写真の腕ではあの雄大さはとてもレンズで捉え切れるものではない。実際にそこに行かなければ見られない景色である。それでも田んぼのあぜ道みたいな農道に折れて山と空を撮影してみた。
仙台への帰路はこの段階でもまだ決めかねていた。二択である。会津若松市、喜多方市を経由して山形県へ入るプランか、天栄村から湖南町へ抜け猪苗代湖をぐるっと迂回して、R115で福島市、飯坂温泉経由で宮城県に抜けるプランである。先のエントリーにも書いたように、前者のプランは2021年3月に走破しているし、その際は会津若松市内の渋滞に辟易した。下郷町内で初踏破区間を含む天栄村経由湖南町というプランに決定して、R118に乗るべく阿賀川を渡る。
天栄村羽鳥湖までのR118は眼福に溢れていた。たぶん会津地方から須賀川へ抜ける裏道なのだろう。走っているのはほとんど商用車ばかりだが交通量は極少。山に囲まれて初夏の緑が美しい。写真を撮りたくて頻繁に道路端にプン太郎を停めてしまったため、想定以上に時間がかかったが、まったく惜しくない。
これまで何度か訪れたことがある羽鳥湖まで至ると、K235に左折して北上する。羽鳥福良線というこの県道がこれまた素晴らしい。山中のワインディングロード。どうせ速度を出すわけではないので、サイドウィンドウは開けっぱなし。エゾハルゼミの鳴き声が充ち満ちている。
峠を越えると明らかに植生が変わる。杉木立の中を下っていくと唐突に隠津島神社が現れる。天栄村側から下っていくと、杉林の中に突然現れるので少しびっくりする。せっかくなので立ち寄ってお参りしていくことにした。
さらに北上するといつの間にか湖南町だ。ここでまた経路を選択しなければならない。東に進んで郡山市、三春町を経由して宮城県丸森方面を目指すプラン、もうひとつは猪苗代湖を迂回してR115で土湯峠を経て福島市内というプラン。ん?ちょっと待てよ。R115土湯峠から吾妻磐梯スカイライン経由で飯坂温泉へ抜けられるじゃないか。コロナウィルスまん延以来、福島路も久しく走っていないが、郡山云々の前者プランはたまたま息子と昼食を食べるために先日走ったばかりだし、むしろ定番のR115や吾妻磐梯スカイラインの方が久しぶりだ。ここはひとつ馴染みの道にあいさつしておこうかという気になり、湖南町から敢えて遠回りの猪苗代湖西岸を走り、東西に走るR49を目指す。
懐かしい食堂「大阪屋」を脇目に北上する(まだ営業時間前だ)。湖南町から会津若松市内のR49との合流地点まではそこそこの距離で時間もかかる。その上道路工事やペースの遅いクルマにアタマを押えられたりして、この区間はちょっと我慢大会みたいになってしまった。猪苗代湖畔の長浜駐車場に辿り着き仮眠をとる。暑い。
太郎庵を出発してR115で土湯峠を目指す。相変わらずこちらも美しい。しかしR115を東進して本当に美しいのは、午後の陽射しが山にあたる午後の時間帯である。この日はまだ午前中なので逆光を受けつつ山道を登って行く。いつかまた午後に来よう。記憶にある吾妻磐梯スカイラインへの分岐点には「直進せよ」の看板が林立しており、キツネにつままれたような心持ちで土湯トンネルを走破。するとようやく左折せよという看板が現れる。どうやら土砂崩れかなにかがあったらしく、K70の一部の区間(さっき看板で直進を指示された箇所から)が通行止めになっていたようだ。そしてようやく乗ったスカイラインは、高齢者が運転する超スローペースのクルマが多く、まったく冴えない道のりになってしまった。吾妻小富士を過ぎてもまったく天気に陰りはなく、だからこそ本当にもったいない。もっともこのスカイラインは絶景の連続なので、一般人は景色を見たいからペースが遅くなって当然である。筆者のようにどんどんギアを下げて速度計の針ばかりが上昇していくようなヤツの方がここでは異端児なのだ。
下りパートに入ってしばらくすると「つばくろ谷」という駐車場と公衆トイレがある。ひと休み。
この下りも我慢大会だった。ようやく下界に到達し、K5フルーツラインに乗ると調子が出てきた。飯坂温泉を目指す。宇都宮と南会津を経由した結果、フルタンクだったガソリンが心もとなくなっている。飯坂温泉にある昭和シェル石油飯坂SSで給油。筆者はツーリング先で給油する時は、必ずクルマから降りてみる。土地の空気を吸ってみたいし、店員さんとおしゃべりも楽しいのだ。エプロン姿のおばさんと「暑いですねー」的な会話。訊けば久しぶりの晴天と暑さだという。飯坂温泉付近の夏の暑さを筆者は知っている。暑くなったらなったで大変なのだ。
さてこのタイミングで昼時なのだが、和泉屋旅館のファビュラス朝食が威力を発揮し、まだ空腹ではない。そして飯坂温泉、立ち寄るべき飲食店を知らない魔のスポットでもある。昨日から贅沢な食事を重ねてきた後ろめたさに、ついコンビニおにぎりで済ませてしまう。ファミリーマート飯坂温泉駅前店へ入店。暑い。
コンビニの駐車場でエアコンを使うためだけにアイドリングする罪悪感に耐えられず、すぐにプン太郎を発信させる。桑折町へのK124(ナイス番号!)を走りながら、おにぎりなどパクつく。コンビニおにぎりに相応しい食べ方である。桑折町へ抜け国見町へK353を北上する。さてここでまた経路を選択しなければならない。①稲子峠を越えて宮城県七ケ宿町へ。K51などを乗り継いで村田町へ抜けるお馴染の道。②福島県内で伊達市梁川へ抜け、R4で宮城県白石市、スイートな農道を経由して村田町へ。③国見ICでE4東北自動車道へ乗ってしまう。さてこの三択、いずれが正解なりや。①は距離が延びてしまって如何にもしんどい。必然的に②と③で迷うことになる。考えてみれば翌日、翌々日にも仕事以外の予定がいくつも入っていることから、体力温存を優先し③をチョイス。仙台宮城ICまでノンストップで走り、無事帰宅した。
走行時間不明/590km
今思い返しても夢のような福島路であった。どのセクションもエントリー1回分を費やして語るに値するが、今回敢えてトップに据えるとしたら、南会津から湖南町へのR118-K235だろう。もちろん全編が天気に恵まれたからとは言えるが、それを差し引いてもそこだけを目的にまたプン太郎を走らせたくなる道ばかりだ。一方で感染症の様子はまだ予断を許さない。みなさまクルマの運転だけでなく、感染症対策も含めてご安全に。
了