Profumo姐さんの新愛車お披露目会に参列した後、宇都宮から筆者が向かったのは南会津町。ここで1泊してから仙台に帰ることにしていた。なぜ南会津町か?それは今年の3月、当家長男の就職にあたり栃木県足利市へ赴いた時までさかのぼる。足利からの帰路を日光→南会津→会津若松→喜多方……と東北の背骨あたりを延々北上するコースに設定した時に、南会津町を通り抜けた。福島県最南端の山間の町。そう聞くと人家もまばらな里山を想像してしまうかもしれないが、筆者が実際に見た南会津町は銀行、商店、飲食店、駅など、町の機能がギュッと詰まり、活気に溢れていた。こういう町には独特の人情や文化が今も大事にされているに違いない。そんな興味をおぼえて、南会津町を目的地としたツーリングネタになればと、ネットであれこれ調べはじめていた。その時見つけたのだ、和泉屋旅館を。
和泉屋旅館がいかに素晴らしい宿か、それは後に書く。なにしろ宇都宮からの往路も、南会津町から仙台への復路も、そりゃあもうベリースイートだったのだ。
まずは順を追って書こう。旅の1日目。ろまんちっく村でのお披露目会を辞して、K22>R119>K279を経由して日光と南会津を結ぶR121を目指す。経路の組み立てに自信がなければろまんちっく村の目の前を走るR293と、それに直交するR119で日光を目指すのが一番わかりやすいのだが、そういう道路は得てして交通量が多く、信号も多けりゃペースも遅い。こちとらそういうのが一番苦手(笑)。だからこそ裏道ちっくなK22+K279である。それでもある程度のスロートラフィックを覚悟していたのだが、予想に反して快適なペース。木立が左右を囲む区間が多い生活道路なのだろうけど、「街道筋」のムード満点で楽しい。早々にR121へ合流して南会津に一直線である。
こちらは3月にも走ったばかりなので景色に見覚えがある。午後の曇天は梅雨入りしているのだから仕方ないが、夜に向けて雨という予報の日だった。3月の時もこんな天気だったが、できればからりと晴れた日に走ってみたい道だ。というのもこのR121、福島県との県境までずぅっと温泉街が続く。有名な鬼怒川温泉もこの区間にある。ただもちろんこのご時世に大賑わいなんてことはないから、クルマで走り抜けるだけだと実に閑散としているように見える。そこに曇り空。これは侘びしいよ。道路自体は楽しい。温泉街と聞いてピンと来る読者もいると思うが、温泉街とそこに至る道路というのはたいていくねくねしているし、アップダウンもある。つまりプン太郎の大好物というやつなのだ。なのでせめて天気が良ければなぁと思わずにいられない。
福島県内に入ると、南会津町の中心部はそう遠くない。30分も走らずにとうとう和泉屋旅館に到着。だが駐車場がどこにあるのかわからない。ネットで調べようにも、そもそも公式ウェブサイトがない。GoogleMapのストリートヴューで周辺を探してもそれらしいものは見当たらない。だが電話で予約した時に確認したら駐車場は「ある」という。建物の端っこに自家用車用と思われる空きガレージがあったので、仕方なくそこにプン太郎を停めて、半信半疑で玄関に入り人を呼ぶもだーれも出てこない(笑)。何度も何度も呼んで、ようやく出てきた宿の女将さんに聞いたら、そのガレージがまさかの宿泊客用の駐車場だった!限定1台。他にも駐車希望のお客さんがいたらどうするのか、停めてるこっちが心配になってくる。それはさておき、和泉屋旅館の外観をご覧いただきたい。
この画像で気分が高揚する人には説明がいらない……というか、如何に風情があるか語りあいたくて仕方ないし、こんな古びた宿、自分には泊れないと思った人には、これから筆者が書くことや画像は自虐行為にしか見えないかもしれない。非常に個人的な話だが、最近の筆者はビジネスホテルのシングルルームというものにまったく魅力を感じなくなってしまった。理由はいくつかあるが、今回に限れば、それは旅の目的に合致していないからだ。ひとりツーリングなんてものは、効率や能率という言葉から一番遠い行いである。一方で駅至近のビジネスホテルとは効率・能率の権化である。ひとりツーリングで泊る宿には余白がほしい。そう考えれば、こういう旅で泊る旅館の建物は決して最新最高のものである必要もないということになる。筆者など古けりゃ古いほど嬉しい。文人墨客の宿泊実績などは無くても良いが、創業は明治時代なんてくらい徹底的に古い方が落ち着くし、様々な不便がむしろ「味」として楽しめるのだ。和泉屋旅館は、まさに「風合い」「風情」「侘び寂」たっぷり、つまり旅情に溢れた宿だった。
興味ある方はGoogleで「南会津 和泉屋旅館」で検索して、投稿された写真を見てみてほしい。筆者は人に「横溝正史の小説に出てくるような」と説明しているが、これは褒め言葉である。部屋で晩ご飯を待っている時にわかったのだが、旅館が面しているR121を大型車が走り抜けるたびに建物全体が揺れるのだ。最初は本気で地震速報アプリを確認してしまったくらいに。だがそんなことすら嬉しくなってくる。これは「まーたオイル漏れだよー」と苦笑いしている欧州車乗りの心境ととても似ていると思う。完全じゃない部分に惹かれるのだ。1階の6畳間に通されてすぐに風呂をいただく。この風呂も温泉でもなんでもない普通の風呂。あがるとすぐに南会津町探検に出かけた。1ブロック先が会津田島駅なのだが、そこまで歩いたらとうとう雨が降ってきたので引き上げてしまった。残念。
宿に戻ると待ちかまえていたかのように厨房から声がかかる。「晩ご飯、もうお部屋に運んでいいですかー?」18:30頃である。望むところである。お願いします!
この晩ご飯がとてもとても美味しかった。病身の筆者には量が多過ぎるし、天ぷらの油やふき、えのきなど繊維質を多く含んだ禁忌食品も散見される。おかずの品数が多くて白飯など胃に入れる余地もない。しかし温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、ほぼ全てが地場の食材だけで組まれた献立を残すことはどうしてもできなかった。白飯は結局お櫃から3回よそってしまった(笑)。だって!美味いんだもん!!こんなこともあろうかと、直前の1週間は食事量と内容に気を使って腸のコンディションを万全に整えてこの夜を迎えているのである。モスバーガー6個食べたことがあるオレの胃袋を舐めるなよ、である。 ←こういうのが良くない
会津と言えば馬刺し
晩ご飯を堪能し、2回目の風呂からあがると何もすることがない(笑)。SNSなど巡回していたがちっとも面白くない(笑)。結局早々に寝てしまった。
つづく