コロナ禍下でのツーリングネタとして、宮城県内の未踏地・未走破道を探索中の筆者。この春立て続けに県北地域開発を行い、一定の成果を得た。
毎回北にばかり向かっていてはスキルが偏向してしまうし、何より新鮮味が薄れてしまう。そこで今度は県南地方に目を向ける。具体的には七ケ宿町、白石市、角田市、丸森町、山元町などである。これらは福島県や山形県との県境であり、丸森町のような一部例外もあるが、これまでは隣県への経路としてあっという間に通過してきた地域ばかり。県北地域開発と同様に視点を変える必要がある。基本は「この交差点、こっちには曲がったことがないけど、どこに出るんだ?」のココロである。
そんなわけで、指したる目的もないまま県南方面に走り出した。家人もいっしょなので、いっそ向かう先は家人に決めてもらおう。まずは村田町を目指す。村田町は歴史的建造物が多く「蔵の町」を名乗っている。公の無料駐車場も充実しているので、プン太郎を停めて少し街歩き。
旧い建物好きの家人は大フィーバー。古の街並みを堪能して11:30過ぎ。朝食がいつもより遅かったこともありまだ空腹ではない。村田町で食事と言えば銀座食堂やとんかつの花彩などがあるが、いずれもヘビーである。もう少し走ってその先で再考することにして、大河原町を目指す。
大河原を南北に走り抜ける時はR4、東西の場合は仙南東部広域農道こと蔵王さくらロードが定番だが、後者はともかく、前者の大河原区間のR4はロードサイド店舗が軒を連ねるばかりでツーリングコースとしては面白みがなく、近年では避けている。しかしR4の東の地域、特に白石川河川、JR大河原駅周辺などは、平成を通り越していまだに昭和の空気が色濃く漂うレトロな旧い街並みが続く。大河原町内をぶらつくことはしなかったが、ちょっと心惹かれる飲食店をいくつか見つけた。いずれツーリングの目的地そのものになる日もくるだろう。
昼食のメニューとして、そば、うどん、素麺などのライトな内容を家人が提案。大河原から南下すれば「温麺(うーめん・素麺と同素材だが油を使わずに製麺される)」で有名な白石市がある。ところが基本精神に法りなるべく未走破の道路を選んで走った結果、角田市に近づいてしまった。角田は不案内だがそろそろ13時を回ろうとしており、一般的な昼食時間の終焉が近い。角田の街並みを堪能しつつ走っていたら「手打ちうどん泉屋」さんを見つけ入店。筆者は冷やし肉うどん、家人は味噌だれざるうどんをオーダー。
冷やし肉うどんは冷やし中華の麺がうどんに替わったものと思ってもらえれば概ね正しい。加えて「肉」とはチャーシューである。カラシを付けつつ食べるチャーシューと酸味の利いたツユにシコシコのうどんが絡み、夢中で食べ進んでしまう。ひとくち分けてもらった味噌だれもりうどんも、おろし生姜によってターボ過給されうまい。肝心のうどんはもっちりしこしこで筆者好み。角田に心の拠り所ができて嬉しい。
角田から仙台への復路を漠然と組み立ててみるが、あまり選択肢はない。「1.山元・亘理町へ抜けて海沿いを北上。塩竈から利府経由で仙台」と「2.蔵王町方面へ西進、村田町経由で北上して仙台」のふたつだろう(単に北上してR4経由で名取市……なんてことはしない)。前述のとおりこの日は予備調査として、未走破道路を優先したい。そうなると未走破道含有率が高いのは蔵王・村田方面である。往復路の一部重複を覚悟の上で西を目指して走り出す。春特有の霞がかった晴天のこの日、県南平野部からは常に蔵王山脈が遠く西に見えている。だからそれを目指して走れば良い。素敵眺望の田園地帯を適当な道を選びつつ走っていたら、手代木沼に出た。手代木沼は丸森行のランドマークのひとつである。思いがけずいつもの道路に出てしまった。再びその道から逸れてもあまり大きな変化はなく、新鮮味の薄い、安定感抜群の復路にはなってしまった。
では退屈な復路だったのか?と問われると筆者の返答は違う。いつもは「ここを曲がるとどこに出るんだ?」と興味は持つのだがそのまま素通りしてしまう交差点を、この日は思いつきでどんどん曲がっていった。その結果美しい里山の景色を堪能することもできた。おおよそのルートの関係性もわかってきた。これはいくら地図を見ていても養われるものではなく、実際に走ってみないと身に付かないものだ。角田・丸森付近だけとは言え、この日の復路でずいぶんと理解が進んだ。当面県南開発を推進していこうと思う。