クルマで行きます主催オフ会にて試乗の機会をいただいた。ありがたいことである。それぞれのインプレッションを書いてみよう。5台とも山形県山形市、西蔵王公園のまったく同じコースを走った。勾配の強い上り坂が数百メートル、高低差の少ないワインディングを数kmの往復である。この日の試乗体験は個別にアップしていく。

Profumo姐さんのアバルト 124スパイダー
これまで何度も試乗してきた124スパイダーではあるが、この日の短時間試乗から得られるものは多大だった。細かいカスタマイズの内容は姐さんのブログをお読みいただくのが一番良いが、今回もっとも注目していたのがパフォーマンスバーとロアアーム。ボディ剛性向上とサスペンション動作の強化パーツである。フロント2輪の位置決めが正確性を増すことで、どのような旋回動作の変化があるのか。それが興味の核心だった。そもそも筆者はオープンカーというものは、ボディがねじれてナンボ、撓ってナンボと考えるので、124スパイダーの(全体であれ局部であれ)強度を嵩上げすることには疑問を持っている。そんなに硬くしなくてもいーじゃん、のココロである。が、Solaia号(姐さん命名)で、特に旋回動作を味わうと、その考えが揺らぐのもまた事実。早い話が好感触だったわけだ。
124スパイダーにはこれまでに何度か試乗の機会を得ていた。
2016.10.18. 試乗記・ABARTH 124スパイダー あれこれ言ってもしょーがない
2019.05.04. 試乗記・アバルト124スパイダーふたたび
124スパイダーのツルシの状態を運転してみて、旋回性能に不満を持つ人が多くいるとも考えられない(サーキットユースとか、峠バトルみたいな人はわからないが)。そもそもの大元となったマツダ ロードスター(ND)の旋回性能は、スポーツカーのお手本のようなそれなのだから、当然と言えば当然。だからこれまでの124試乗体験でも、旋回云々について特筆することはほぼ無かった。運転手の意に沿った動作に充分なっていたからだ。ところが、Solaia号の旋回体験が、過去の記憶を大きく上回っていることも確かで、それは速度に関わらずコーナーをふたつも走ってみればわかる。試乗経験を持っている筆者など、「なんだこれ?」と戸惑ったほどだ。旋回という動作は、多くのパーツが一度にそれぞれの仕事をするので、どこがどうと説明が難しいが、誰だっていちどイイ旋回を味わってしまうと、ワルイ旋回がよくわかるようになる。で、特にNDロードスター/124スパイダーは「イイ旋回」を味わいやすい車種である。その124を以てして、まだ向上代があったのか……!という驚きに打ちのめされるのが走り出し1分である。
ハンドルを切る、前輪が向きを変えて横力が発生する、それが手の平に感触として伝わる……という一連の動作が、遅滞と遺漏なく行われていることがよくわかる。しかし神経質ではない。オーバーシュートぎりぎりのリニア感。曲率の大きなカーブではセンチメートル単位で軌道を修正できる、ような気がする。そういう動作を一度でも体感すると、喜びと同時に、前述の「オープンカーにここまでの強度が必要なのか?」という気持ちもふとよぎる。またフロントの強度を上げることでリアのパワーオンがより敏感に分かりやすくなるのも確かで、峠道でのシビアな旋回や、ドリフト旋回みたいな運転への間口は広がると言えるのかもしれない。やったことがないからわからないけど。
NDへのモデルチェンジによって、「正真正銘のスポーツカー」の看板がわずかに色あせたロードスターと、それをベースに仕立てられた124。例えば筆者は124には高機動旋回マシーンとしてよりも、気持ちを解放しつつ快適に移動できるGTを求めてしまう。だから、まぁ、そこまでの剛性や正確性は少し持て余してしまうだろうな、とやっかみ半分で思ったのだった。Profumo姐さん、ありがとうございました。ローダウンスプリングを入れて、車高を落としたらまた乗せてください。