クルマで行きます主催オフ会にて試乗の機会をいただいた。ありがたいことである。それぞれのインプレッションを書いてみよう。5台とも山形県山形市、西蔵王公園のまったく同じコースを走った。勾配の強い上り坂が数百メートル、高低差の少ないワインディングを数kmの往復である。この日の試乗体験は個別にアップしていく。
しまの助さんのルノー メガーヌR.S.Sr.3
「4と3でどれくらい違うか、乗ってみてください」としまの助さんご本人から薦められ、脳みそがオーバーヒート気味だったが運転させていただいた。驚いたのはかつてあれほどタイトだと驚いたSr.3に緩さを感じたことだ。もちろんそれはSr.4試乗直後だからではある。プントエヴォに比べれば、それはしっかり硬いのだが、4と比較すると緩い……のではないか……。いや、どうも絶対的な緩い硬いの話ではないような気がする。Sr.3の設計時、剛性はこのレベルを以て善しとルノーは判断したのだろう。ボディやシャシーの剛性は「このクルマはこう走るべきだ」という理念と直結の調整要素。例えば往年の(=1990年代初頭までの)ベンツ車両は、意図的にボディ上屋の、それも後部を緩く建て込んだ。そうやって旋回時にボディにかかるエネルギーをわざと逃がしたのだ。BMW車両は逆だ。カチンカチンに固めて、その硬さを後輪のパワーオン時のトラクションに利用する。剛性設計だけでもブランドの意志や理念は読み取ることはできる。Sr.3のこの絶妙の剛性感は、273psを突っ張らずに受け止めて動作に還元するという、フランスらしいやり方だったのではないだろうか。一方で後輪操舵を初めとする電子制御の増し増しで走りを作り込んだSr.4とは、もはや走らせ方の考え方が違うわけで、車体剛性調整の考え方が違うのも当然と言える。緩いからダメ、硬いからヨシという単純な話ではないのだ。
もっともSr.3で一般車両と混じって走っていると、そもそも剛性も加速・旋回・制動の能力も図抜けて高いこともわかってしまう。そしてルノーの巧みなチューニングによって、Sr.3でなければ味わえない世界がちゃんと構築されていることもわかる。世間的にはフォーカスやゴルフRなどが対抗車種と言われるだろうけど、本気で購入しようとするなら、真剣に悩み、ちゃんと納得できるだけの性能と理由がメガーヌにはある(もちろんフォーカスやゴルフにもある)。ただSr.4の登場によって、メガーヌという1車種の中でも、Sr.3にするかSr.4にするかという難しい選択が起こり得るようになってしまった。3でも4でも、例え20km/hでも存分にその楽しみを享受できるし、速度を上げていっても破綻の気配さえない。こと日常生活の一般道で硬さと速さをたっぷり味わえるという意味では、2021年の今でもSr.3は一級品であることは間違いない。そしてここでもやはり、高性能は人に優しいということを考えずにいられなかった。しまの助さん、ありがとうございました。